獣医師のにゃんとす@nyantostosです!
最近、異常気象や地震が本当に多いですよね。
南海トラフ地震や首都直下型地震も近い将来起こるとも言われています。
本当にいつどこで災害に巻き込まれてもおかしくありません。
そうなった時、愛猫を守ってあげられるんだろうか…と不安になりつつも具体的な対策は後回しになっていませんか?
いざという時にペットたちを守ってあげられるのは、飼い主の日頃の備えのみです。
愛猫と一緒に避難する際の正しい知識と揃えておくべき防災グッズをご紹介するので、この機会に一緒に準備しちゃいましょう!
獣医にゃんとす
– 獣医師・獣医学博士
– 臨床獣医師を経験後、がんをはじめとした難病に苦しむ動物を救うべく研究者を志す。
– 1匹の猫と暮らす「げぼく」
– 著書:猫をもっと幸せにする『げぼくの教科書』
この記事を書いた人
獣医にゃんとす
– 獣医師・獣医学博士
– 臨床獣医師を経験後、がんをはじめとした難病に苦しむ動物を救うために研究者を志す。
– 1匹の猫と暮らす「げぼく」
– 著書:猫をもっと幸せにする『げぼくの教科書』
なりすまし行為に注意
獣医師相談サイトなどで獣医にゃんとす、もしくはこの記事のゴーストライターを名乗るなりすまし行為が多数発生しております。このブログのすべての記事を獣医にゃんとす本人が執筆しております。またいかなるプラットフォームでも個別相談はお断りし、かかりつけ医の受診をお願いしております。なりすまし行為にはご注意ください。
本当に愛猫と避難できるのか
そもそも私たちは愛猫と一緒に避難することができるのでしょうか?
行政の体制はどれくらい整っているのでしょうか?
ペットとの避難は大きく分けて2つあります。
- 同行避難:ペットと一緒に避難所に行くこと
- 同伴避難:避難所でペットと同室で過ごすこと
実際に同行避難・同伴避難できる環境はどれくらい整っているのでしょうか?
いくつかの自治体に直接電話で確認してみました!
愛猫と同行避難は可能だが同伴避難は難しい
インタビューを行ったのは以下の3つの自治体です
- 都内23区の某区
- 関東の中核市
- 関西の政令指定都市
これら3つの自治体とも回答は似たような内容でした。
要点をまとめるとこんな感じ。
- 基本的にはペットと一緒に同行避難することを勧めている
- しかし、厳密には避難所が受け入れ可能かどうかは各避難所の管理者次第なので災害の規模等により受け入れられない避難所もある
- 同行避難を受け入れたとしても同伴避難はできない場合が多い
- つまり、人間と同じ部屋で一緒に過ごすことはできず、ペットはペット専用の部屋や屋外、もしくは渡り廊下のような場所でキャリーやケージに入れた状態で過ごす
- それにもかかわらず、貸し出すケージの備蓄はほぼない
という回答でした。
まとめると、ペットと一緒に避難所には行ける(同行避難)がペットと同じ空間で過ごす同伴避難はできない場合が多いということでした。
衛生面等の問題もあり、国としても同行避難を推奨しています。
実際に2016年に起きた熊本地震では、避難したペットのうち屋内へ避難できたのはたった3割で残りの7割が屋外または車中泊だったようです。
真夏や真冬の場合は、屋外で過ごすことを余儀なくされるペットたちの健康も心配です。
このような現状を考えると、避難所への同行避難だけではなくいくつか選択肢を作っておくことも非常に大事です。
同行避難以外の選択肢
- 在宅避難
- 知人宅やペットホテルに預ける
場合によっては在宅避難も選択肢のひとつになるでしょう。
在宅避難を安全に選択するために、自宅の耐震強度や地域の災害ハザードマップ(洪水や土砂災害のリスク)などをよく確認しておくことも重要です。
また自宅が災害の危険が高い場合には、高台などの安全な地域で預かってもらえる知人宅やペットホテルを探しておくことも必要でしょう。
同行避難をする場合でも、ほとんどの自治体でケージの備蓄がないというのは大事なポイントです。
これらのポイントを踏まえながら、日頃からできる防災対策を考えていきましょう。
猫の防災グッズに必要なものは?
多くの避難所で同行避難はできるようでした。
しかし、どんなペットでも受け入れるかというと一応条件が設定されている自治体が多いようです。
例えば板橋区の場合はこんな感じです。
【受入条件】
- 飼い主がケージ等を用意していること。
- 餌や水などを用意しており、餌やりや糞尿の始末は飼い主自身が行えること。
- 基本的なしつけ(無駄吠えしない、飼い主の指示に従うなど)ができていること。
- 犬については、狂犬病注射済票を持っていること。(予防接種を受けていない場合、伝染病が蔓延する可能性があるため、避難所では受入れできない。)
猫ちゃんの場合は特に①や②が当てはまりますね。
これらを踏まえて、我が家では防災グッズとして以下のようなものを揃えています。
我が家で準備している防災グッズ
- フードと水5日分
- 避難用のキャリーバック
- 避難所でのポータブルケージ
- 猫トイレと猫砂
- ハーネス・リード
- 洗濯ネット
- 食器・水飲み
- 療法食・薬
- 臭いをとる袋(糞尿対策)
- ガムテープ・マジック
獣医師が準備した猫のリュック式防災グッズセット
フードと水は最低5日分用意しておく
我が家で用意しているフード・水
- ドライフード:サイエンスダイエットプロ(500g)
- ウェットフード:ピュリナワンパウチ(8個)
- 軟水2L
避難所にキャットフードが届くまでには時間がかかります。
実際に東日本大震災では、ペット用の救援物資を運ぶ車両が緊急車両として認められず、ペットフードが飼い主の手に渡るまで約5日かかったと言われています。
つまり、最低でも5日分のキャットフードは自分で用意する必要があります。
水も人間と兼用で2Lのペットボトル1本は用意しておきましょう。
ミネラルの少ない軟水を選んでおくと良いです。
一方で、環境の変化によるストレスであまり水を飲んでくれない場合もあるかもしれません。
そんな時のためにウェットフードも用意しておきましょう。
ウェットフードは食事と一緒に水分を摂取することができるので持っておくと便利です。
缶詰でもよいですが、パウチだとかさばらないのでおすすめです。
うちはピュリナのウェットフードを用意していますが、ロイヤルカナンからもいくつかパウチが出ているのでそちらもおすすめです。
保存食として別にキャットフードを用意しておくと、どうしても消費期限が近づいてしまい、鮮度を保つのは難しいですよね。
そこでおすすめの備蓄方法が「ローリングストック」です。
日常の生活の中で消費しながら備蓄するのがポイントです。
普段から少し多めにキャットフードを購入しておき、使ったら使った分買い足すという考え方です。
消費の際は1番古いものから順番に使うようにすれば、常に新しいものが備蓄することができます。
ローリングストックでかしこく備蓄しましょう!
支援物資のキャットフードが届いたとしても、愛猫がいつも食べているものが届くとは限りません。
特に好き嫌いが多い猫ちゃんの場合はお気に入りのごはんを準備しておくようにしましょう。
しっかりめのキャリーバックを用意しよう
避難する際に猫ちゃんを入れるキャリーバックが必要です。
キャリーバックを選ぶ際のポイント
- しっかりした作りのもの(通気性が良いものであればなお良い)
- 猫の脱走防止のためのフックがついているもの
- 小物を入れる場所があると便利
脱走防止用のフックがついていると安心です。
車で避難する予定の方は、重たくても問題ないのでがっしりしたタイプがいいでしょう。
動物病院の通院用と兼用する場合は上からも横からも開くタイプのものがおすすめです。
避難所生活にポータブルケージは必須!
先に述べたように、多くの自治体・避難所でケージの備蓄はほとんどないとのことでした。
ケージを持っていないと避難所での生活中、ずっとせまいキャリーバックの中に閉じ込めておくことになってしまいます。
つまり、自分でケージを準備しておく必要があります。
とは言っても金属製のケージは重すぎて持ち運びできないので、折りたためるタイプのポータブルケージを用意しておきましょう。
我が家では猫壱さんのこれを準備しています。
折りたたむとこれくらいの大きさです。
これなら徒歩で避難することを想定している人でも、そんなに負担になりませんね。
名札を入れる場所もあるのも良いです。
他にはキャリーバックがそのままケージになるタイプも販売されています。
避難する際は人間分の荷物だけでも相当な量が予想されます。
ポータブルケージよりは狭めですが、荷物が増えないのは良いかもしれませんね。
猫トイレ・猫砂も忘れずに
ケージを準備できたら、次はその中に入れるトイレです。
もちろん大きいに越したことはないのですが、人間用の避難グッズももっていかないといけない状況で、あまりに大きいものは現実的ではありません。
我が家では、猫壱さんの折り畳み式のトイレを準備しています。
折りたたむとこれくらいの大きさに。
ややコンパクトですが、耐水性のある素材で作られており、ネットで見たイメージよりもしっかりしています。
砂は鉱物系が理想ではありますが、重たい猫砂は避難時は相性が悪いです。
軽い紙製のものを用意しておくのも良いでしょう。
自身の避難スタイルに合わせたものを準備しましょう。
ハーネスやリードも脱走防止につけておく
避難所生活中、ケージを開けてごはんやトイレのお世話をすることがあると思いますが、その際にどうしても脱走の危険があります。
基本的には避難所生活中はハーネスとリードをつけておく方が良いでしょう。
ハーネスが苦手な猫ちゃんも結構多いので日頃から装着の練習をしておくと、ストレス軽減になります。
首輪は暴れるとすっぽ抜けることがあるので、首輪を普段からしている場合もできればハーネスを用意しておくと安心です。
暴れがちな猫ちゃんは洗濯ネットに入れる
暴れがちな猫ちゃんは洗濯ネットに入れてから、キャリーに入れると脱走を防止できるので安心です。
また普段おとなしい猫ちゃんでも、災害時のようないつもと違う状況ではパニック状態になってしまい、予想外の動きをする可能性があるので、念のため持っておくと便利でしょう。
百均のものなどでも問題ないと思います。
食器や水飲みは使い捨てのものでOK
汚れたら捨てることができるプラスチックのお皿や紙皿でいいでしょう。
我が家では100均のペーパーボウルを準備しています。
またシリコンのたためるタイプのものなどは、持っていく際にかさばりにくくて良いかもしれません。
持病がある子は療法食・薬を絶対忘れない
薬や療法食を与えることができない日が続くと持病の悪化につながります。
救援物資の中には療法食や薬も含まれているようですが、愛猫に適したものがある保証はありません。
必ず準備しておくようにしましょう。
また、避難生活が長引いた際などは、かかりつけではない先生に巡回診療などで診てもらうことあると思います。
今までどんな症状があって、何という病気と診断されているのか、また飲んでいる薬が何なのかを把握しておくとスムーズな診察ができると思います(できれば薬の名前まで)。
メモを一緒に入れておくと良いかもしれませんね。
臭わない袋は糞尿対策にとても便利
避難所生活において、糞尿のにおいは他の避難者の迷惑になってしまう可能性があります。
愛猫の排泄物を適切に処理するためのものも準備しておきましょう。
おすすめはこの「うんちが臭わない袋」!
こうやって裏返して手袋のようにして使えば、手が汚れずに排泄物を回収できます。
この袋、本当に臭わないので普段の猫トイレの掃除でも重宝しています。
ガムテープやマジックペンも持っておいて損はない
避難所生活中、持っておくと何かと便利です。
ガムテープは壊れてしまったものの補強などにも使えます。
また移動中に衝撃などでキャリーのとびらが開いてしまわないようにガムテープで固定しておくと良いでしょう。
愛猫の心と体の準備も進めておく
様々な防災グッズを紹介してきましたが、防災対策は物品だけではありません。
普段使っていないものをいきなり災害時に使うことはとても難しいです。
普段から猫ちゃんの心の準備も進めておきましょう!
キャリーに慣れさせる方法
キャリーって普段は病院に行く時にしか使いませんよね。
猫ちゃんも、あのキャリーに入れられたら嫌なことが起きると覚えてしまっている子も少なくないと思います。
普段からキャリーの中でおやつやご飯をあげるようにするなど、キャリーに入るのが良いことだと習慣づけを行うのも良いでしょう。
キャリーに慣れさせるコツ
- キャリーのとびらを開けて部屋に置いておく
- キャリーの中でおやつや食事を与えてみる
- キャリーの中に慣れたらとびらを閉めてみる
- とびらを閉める時間を延ばす
- 持ち上げてうろうろ歩いてみる
また猫には”隠れ家”があった方がストレス軽減につながるという研究結果があります。
キャリーバックを隠れ家として普段から室内に置いておくこともおすすめです。
ハーネスに慣れさせる
ハーネスが苦手な猫ちゃんは結構多いです。
実際、我が家のにゃんちゃんは普段は何もつけていないのですが、防災対策としてたまにハーネスをつける練習をしていますが、まだまだ練習が足りず、ほふく前進のようにうまく歩けなくなってしまいます。
被災時に初めてつけるのは、ただでさえ普段と違う状況なのでストレスがさらに多くなるでしょう。
付け方の確認、長さの調節も含めて、前もってつけて慣れさせるようにしましょう。
ワクチン接種・ノミダニ・フィラリア予防をしておく
避難所にはあなたと同じようにペットと同行避難する人が多いため、人間だけでなく多くの動物も集まります。
非常時は衛生状態や栄養状態が悪くなったり、ストレスで免疫力が低下してしまう可能性もあります。
感染症の発生を防止するため、ノミやダニなど寄生虫の駆除や予防、感染症の予防は日頃から必ずしておきましょう。
例えば完全室内飼いでも3種混合ワクチンは接種しておきましょう。
避難所によっては感染症予防をしてあることが条件の場合もあります。
迷子札やマイクロチップを装着しておく
災害時・避難時にはペットの脱走事故も多く発生します。
突然の別れにならないように迷子札やマイクロチップの装着をしましょう。
マイクロチップとは?
マイクロチップには個体識別番号が記録されており、マイクロチップリーダーをあてることで、番号が表示され、飼い主情報を確認することができる。
動物の首の皮膚の下に専用注射器で挿入するもので動物病院で比較的簡単に挿入してもらえる
一度装着すれば、首輪や迷子札のように外れて落ちたりする心配が少なく、より確実な身元証明になる
外出時に災害が起こることだってある
ここまでは、飼い主が家にいる際に被災することを想定してきましたが、外出時に愛猫と別々で被災する可能性も低くありません。
東日本大震災においては、当日中に帰宅できなかった人は首都圏だけで515万人と言われています。
これは地震発生時に外出中だった人の28%、つまり約3割の人が帰宅難民になったそうです。
また悲しいことに外出中に被災し、そのまま亡くなってしまった方も少なくありません。
そんな時、1人おうちに取り残された愛猫はどうなるのでしょうか。
また、取り残された愛猫のことを心配して無理に自宅に帰ろうとすると今度は飼い主さんの命も危険に晒されます。
別々で被災しても愛猫が安全に飼い主の助けを待つことができるように、日頃からお部屋の防災対策も進めておく必要があります。
おうちの防災対策
- 家具を倒れないように固定する
- 窓ガラスにシートを貼る
- 自動給餌器を導入する
- 水やトイレは日頃から準備万端に
家具を倒れないように固定する
家具が倒れないように固定しておくことは非常に大切です。
実際に家屋の倒壊や倒れた家具によりペットが逃げられず死亡したケースもあるようです。
また「家具の下敷きになっていないだろうか」と心配して、無理に自宅に帰ろうとすると飼い主さんの命にも関わってくる場合があります。
窓ガラスにシートを貼る
これも実際に窓ガラスが割れてしまって外に逃げ出してしまったり、また割れた破片で怪我をしたりというケースがあったようです。
台風や地震など、窓ガラスが割れる可能性は多くありますので、対策は必須でしょう。
自動給餌器を導入する
ペットと別々に被災して帰宅できない時には、愛猫に食事を与えることができないという問題も発生します。
もちろん、ごはんがしばらく食べれられないとお腹がすいてかわいそうですが、それだけではなく、猫ちゃんの場合は空腹時間が長いと肝リピドーシスという怖い病気を引き起こすことがあります。
数日フードが食べられない状態が続くと危険です。
そんなリスクを回避するために、我が家ではカメラ付き自動給餌器を導入しています。
普段からご飯のうち1食だけでも自動給餌器から与えるようにしておけば有事の際も数日間まったく何も口にすることができないという状況だけは避けることができます。
ちなみに我が家で使用しているカリカリマシーンSPは停電時でも自動で電池駆動に切り替わるので安心です。
自動給餌器の普段からのメリットについては下記記事にまとめてあります。
水やトイレは日頃から準備万端に
ごはんは自動給餌器でまかなえますが、水やトイレはなかなか難しいです。
水飲み・トイレ共に頭数+1個を目安に複数個、おうちのいろんなところにおいておきましょう。
また毎日出勤前には新鮮な水をたっぷり入れ、トイレも掃除してから家を出るようにしましょう。
もちろん自動給水器や全自動トイレを導入しても良いでしょう。
愛猫の命を守れるのは飼い主だけ
猫は自分で避難できませんし、災害に備えて準備することもできません。
頼りになるのは飼い主であるあなただけです。
私も偉そうに解説してきましたが、まだ準備が不十分な点はいくつかあります。
これを機に自分の防災対策に何が足りないか、見直して準備を進めておきましょう。
災害は突然やってくるのです。。
本記事は以下のサイトを参考にしました。
これらの環境省のパンフレットも1度目を通しておくことをおすすめします。