獣医師のにゃんとす@nyantostosです。
今回はグレイン(穀物)フリーのキャットフードのお話です。
グレインフリーフード、最近流行っていますね。
グレインフリーの売りは「猫は本来穀物を食べないから、グレインフリーの方が本来の食事に近い」というもの。
これだけ聞くと、確かにもっともらしい…と思ってしまいますね。
この記事ではグレインフリーフードって実際のところどうなの!?という疑問にお答えします。
獣医にゃんとす
– 獣医師・獣医学博士
– 臨床獣医師を経験後、がんをはじめとした難病に苦しむ動物を救うべく研究者を志す。
– 1匹の猫と暮らす「げぼく」
– 著書:猫をもっと幸せにする『げぼくの教科書』
この記事を書いた人
獣医にゃんとす
– 獣医師・獣医学博士
– 臨床獣医師を経験後、がんをはじめとした難病に苦しむ動物を救うために研究者を志す。
– 1匹の猫と暮らす「げぼく」
– 著書:猫をもっと幸せにする『げぼくの教科書』
なりすまし行為に注意
獣医師相談サイトなどで獣医にゃんとす、もしくはこの記事のゴーストライターを名乗るなりすまし行為が多数発生しております。このブログのすべての記事を獣医にゃんとす本人が執筆しております。またいかなるプラットフォームでも個別相談はお断りし、かかりつけ医の受診をお願いしております。なりすまし行為にはご注意ください。
グレインフリーにこだわらなくて良い
多くのサイトではグレインフリーのフードが上位にランキングし、このような記載が多く見られます。
- 猫は本来穀物を食べないから、穀物は消化できない。
- グレインフリーの方が自然の食事に近いので、グレインフリーを選ぶべき!
- ヒルズやロイヤルカナンは穀物を多く含むので良くないフードです。
結論から言うと、グレインフリーの方が健康に良いという科学的根拠は一切ありません。
その理由は以下の通りです。
- 穀物は全て犬猫でも消化できる形(アルファ化)で含まれており、良い栄養源となる
- 犬ではグレインフリーフードと心臓病の関連があるかも?
- タンパク質が多く含まれるため、腎機能が低下した猫では注意が必要
詳しく見ていきましょう!
キャットフードに含まれる穀物類は良い栄養源となる
猫は完全肉食動物なので、穀物はうまく消化することができないと言われていますが、本当にそうでしょうか?
実はこれは誤りで、キャットフードに含まれている穀物類は水と熱を加えた状態(米を炊くイメージ)で含まれているので、問題なく消化できるのです。
ペット栄養学会理事の徳本一義 獣医師もグレインフリーには否定的で、ヒルズのHP上でこう述べていらっしゃいます。
穀物に対する食物アレルギーがあるなど、穀物をさけるべき理由がある場合、グレインフリーのペットフードは食事の選択肢として有効です。しかしながら、健康な犬猫がグレインフリーの食事を摂取することについては特にメリットはありません。(ヒルズHPより引用)
我々人間も米を生のまま食べることはできませんが、水を加え圧力をかけて加熱すること(アルファ化)で、食べることができるようになります。(中略)。ペットフードはきちんと加熱調理され炭水化物もアルファ化されていますので、食べても問題なく体内で利用されるのです。猫も犬と同様にアルファ化された穀類由来のデンプンであれば消化吸収できることが分かっています。(ヒルズHPより引用)
つまり、グレインフリーは健康な犬猫にとって特にメリットはないということ、またペットフードに含まれる穀物類は、犬猫でも消化できる形で含まれており、むしろ良いエネルギー供給源になるということですね。
腎機能の低下した猫にグレインフリーフードを与えると症状が悪化するかも
グレインフリーフードは穀物類を全く含まない代わりに、肉や魚などのタンパク質を多く含むような栄養組成になっています。
タンパク質は分解されると毒素が出ます。
その毒素を体の外に出してくれているのが腎臓です。
そのため、腎臓の機能が弱っている時、タンパク質の多く含む食事をとると、さらに腎臓に負担をかけてしまう場合があります。
逆に腎臓病用の療法食はタンパク質の量を制限したフードで、実際に慢性腎臓病の猫の寿命が大幅に伸びることが知られています。
特に猫は高齢になると高い確率で慢性腎臓病を患います。
高齢猫にグレインフリーを与える場合はより一層の注意が必要だと思います。
犬ではグレインフリーフードは心臓病の発症と関連があるのではないかと指摘されている
さらに最近、米食品医薬品局(FDA)がグレインフリーのフードを食べている犬は拡張型心筋症を発症しやすいのではないかという調査結果を報告しています。
この調査には議論の余地が残っていますし、雑食動物の犬と完全肉食の猫ではグレインフリーの効果は異なるかもしれません。
しかし、上記の慢性腎臓病の例も含め、グレインフリーフードが健康を害する可能性がゼロではないということを頭に入れておくべきです。
科学的根拠に乏しい現段階では、グレインフリーにこだわる必要は全くないということです。
猫は穀物アレルギーになりやすいというのも間違い
猫は完全肉食動物だから穀物に対するアレルギーを起こしやすいという話が出回っています。
確かに穀物アレルギーの猫ちゃんも存在しますが…
猫で最も多い食物アレルギーは肉に対するアレルギーなのです。
もちろん、穀物アレルギーの猫ちゃんにはグレインフリーフードは有効かもしれません。
しかし、アレルゲンになりにくいたんぱく質や炭水化物で作られている食物アレルギー用の療法食とは違って、一般の市販ペットフードではそこまで厳密でない場合があります。
穀物アレルギーが疑わしい場合は、必ず動物病院で穀物アレルギーかどうかきちんと診断してもらい、食事の指導を受けるようにしましょう。
まとめ
今後、グレインフリーフードが猫の健康に良い影響を与えるという研究結果が出れば、グレインフリーにシフトしていくかもしれません。
しかし、現時点ではその科学的根拠が一切ないことを理解しておくべきです。
そして、今の段階ではグレインフリーフードを選ぶメリットは全くないということです。
本記事があなたのキャットフード選びの一助になれば幸いです。