獣医師のにゃんとす@nyantostosです。
ネットのキャットフードの記事を見ていると…
特定のキャットフードの危険性を根拠なく不安を煽るような記載が目立つように思います。
例えば…
- 酸化防止剤は発がん性があり危険!
- 副産物やミールには病原体に汚染された肉が使用されていて危険!
ネット上では酸化防止剤が含まれていない無添加のキャットフードや副産物・ミールが使用されていないヒューマングレードのキャットフードが安全性が高いフードとして紹介されています。
果たして本当にそうでしょうか?
酸化防止剤や副産物・ミールは本当に危険なのでしょうか?
結論から言うと、酸化防止剤も副産物・ミールも安全なものなのです。
では本当に安全なキャットフードってどんなフードなのでしょうか?
本記事では安全なキャットフードを見極めるために、酸化防止剤や副産物・ミールの安全性について解説します。
獣医にゃんとす
– 獣医師・獣医学博士
– 臨床獣医師を経験後、がんをはじめとした難病に苦しむ動物を救うべく研究者を志す。
– 1匹の猫と暮らす「げぼく」
– 著書:猫をもっと幸せにする『げぼくの教科書』
この記事を書いた人
獣医にゃんとす
– 獣医師・獣医学博士
– 臨床獣医師を経験後、がんをはじめとした難病に苦しむ動物を救うために研究者を志す。
– 1匹の猫と暮らす「げぼく」
– 著書:猫をもっと幸せにする『げぼくの教科書』
なりすまし行為に注意
獣医師相談サイトなどで獣医にゃんとす、もしくはこの記事のゴーストライターを名乗るなりすまし行為が多数発生しております。このブログのすべての記事を獣医にゃんとす本人が執筆しております。またいかなるプラットフォームでも個別相談はお断りし、かかりつけ医の受診をお願いしております。なりすまし行為にはご注意ください。
キャトフードに含まれる酸化防止剤は安全かつ必要不可欠
なぜフードに酸化防止剤が入っているのか?
そもそもなぜ酸化防止剤が入っているのでしょうか?
それはもちろん、キャットフードの酸化を防ぐためですよね?
酸化したフードは、風味が落ちるだけでなく、動物の健康にもよくありません。
フードが酸化すると…
- 風味が落ち、猫の食いつきが悪くなる
- 動物の健康に害を与える可能性がある
- 添加されているビタミン類が壊れ、栄養バランスが崩れる恐れがある
キャットフードは表面を油脂でコーティングされています。
これは猫の体重あたりに必要なエネルギー量がヒトより多いためで、エネルギー源として油脂をコーティングする必要があるからなのですが…
油脂は非常に酸化しやすいのです。
つまり、キャットフードの品質を保つためにも、酸化防止剤は必要不可欠と言うわけなのです。
キャットフードに含まれる酸化防止剤の量では毒性を示さない
しかし、ここで問題となってくるのが酸化防止剤自体の毒性ですよね。
多くのサイトが酸化防止剤の危険性を煽ったり、無添加フードを勧めています。
しかし、キャットフードにふくまれる酸化防止剤は安全です。
なぜならペットフード安全法で使用基準がきちんと決まっているからです。
この使用基準というのが、1日最大摂取量(ADI)です。
ADIは言い換えると「生涯に渡って、毎日この量を食べ続けたとしても健康に影響は及ぼさない量」です。
キャットフードにはADIを下回る量の酸化防止剤しか含まれていないので、健康への影響は心配しなくても大丈夫というわけなのです。
ADIの求め方
ADIとは毎日この量を食べ続けたとしても健康に影響は及ぼさないとされている量のことでした。
ではこのADIはどのようにして算出されるのでしょうか。
まずネズミを使った実験で、毒性が認められない無毒性量を決めます。
ネズミと犬猫では動物種が異なるので、それによるブレを考慮し、無毒性量に1/10をかけます。
さらに同じ犬猫でも毒性の出やすい個体、出にくい個体がいると考えられるので、それによるブレを考慮し、さらに1/10をかけます。
一生摂取し続けても安全な量(ADI) = 無毒性量 × 1/100
かなり少ない量しか含まれないことがお分かりいただけたでしょうか?
そのため、ペットフードに含まれる酸化防止剤は安全ということになるのです。
キャットフードに含まれる酸化防止剤に発がん性があるのか?
キャットフードに含まれる量では、発がん性は認められません。
特定の酸化防止剤の発がん性云々の話は、ADIの数千倍以上の濃度(つまり毒性量)をネズミに投与した”実験”の話なのです。
冷静に考えて見てください。
私たちが使っている薬であっても、大量に飲めば副作用が出て、最悪死に至りますよね?
水でさえ、中毒量があるのです。
安全量の数千倍以上の量を投与すれば何らかの毒性が出るのは当たり前です。
要するに、ADIを下回る安全な量しか含まれていないキャットフードの話と「安全性試験の際の大量に投与した実験データ」を混同してしまっているため、このような話が出回っているのでしょう。
酸化防止剤は安全です。
キャットフードに含まれる副産物・ミールも安全
キャットフードの原材料を見てみると、チキンミールとか鶏副産物、ミートミールや肉副産物といった表示を見たことがあるのでは?
副産物は私たち人間がいつも口にする肉(正肉)以外の内臓や皮膚、骨のことで、通常、人間の食用に適さないものとされています。
副産物を粉状にしたものがミールです。
しかし「人間の食用に適さない」の部分が独り歩きしてしまい、
- 汚染された死骸肉が混入しているのではないか
- 家畜以外の動物の肉が混ざっているのではないか
といった副産物(ミール)は危険!だという噂が出回ってしまっています。
しかし「副産物・ミールが危険!」という情報は、全く根拠がない誤った情報なのです。
なぜなら、ペットフード安全法によって健康に害を及ぼす可能性のある原材料は使用できないように決まっているからです。
副産物・ミールは安全!
ペットフードの安全は、前述の通りペットフード安全法によって守られています。
そのため、どんな原材料でも使用できるわけではありません。
健康に害を及ぼすものが販売されないように基準が定められているのです。
例えば、病原微生物に汚染された原材料は使用できませんし、微生物を死滅させるために適正な加熱処理(エクストルージョン)が行われるようになっています。
また、農林水産消費安全センター(FAMIC)による立入検査が定期的に行われ、検査結果がweb上で公表されています。
副産物やミールが汚染されていたり、ペットの健康に影響を与えるようなことはないのです。
なぜキャットフードに副産物を使用するのか?
ではなぜペットフードに副産物・ミールを使用するのでしょうか?
副産物・ミールを使用するのには、以下のような理由があります。
副産物が使われる理由
- 人の食用にするには見た目や味に問題があるが、栄養価やコストの面で優れている部位があるから
- 人の食材と住み分けができ、安定的な供給や食の有効利用の面で優れている
- ミールにすることで重量あたりの栄養価に優れ、また他の原材料と混ぜやすく加工しやすい
ヒューマングレードのフードを選ぶべきか?
近年、ヒューマングレードのペットフードがここ数年で増えてきました。
そもそもヒューマングレードとは何なのでしょうか?
まあ簡単にいうと「人間でも食べられるグレードのフード」です。
つまり人間が口にできるレベルだから安心・安全なフードだよっていうフードです。
しかし、これまではヒューマングレードの定義は非常に曖昧で製造メーカーに委ねられていました。
最近になって、米国飼料検査官協会(AAFCO)によると「全ての原材料が人の食用に適したもので、かつFDAが定めたCFR21に記載された適正製造基準に従って製造、梱包、および保管されたもの」と定義されたものの…
未だこの定義は広まっておらず、定義を満たしていないヒューマングレードフードもそのまま存在しているようです。
すなわち、ヒューマングレードと表記されたキャットフードがより安全かというとそう言うわけでもないのです。
本当に安全なキャットフードとは?
いろんな噂がネット上では飛び交っていますが、本当に安心・安全なキャットフードとは何なのでしょうか?
個人的な意見ですが、「長年キャットフードを製造・販売し続け、ペットの長寿化に貢献してきたフードこそが安心・安全なキャットフードではないか」と思うのです。
例えばヒルズやロイヤルカナンは50年以上も前からペートフードの販売を行なっています。
さらにヒルズは世界86カ国、ロイヤルカナンは90カ国での販売実績があります。
つまり、世界中の犬猫がヒルズやロイヤルカナンのフードを長年食べてきたということですね。
まとめ
ネット上には根拠なく特定のキャットフードの危険性を無意味に煽るような記載が多く見受けられます。
キャットフードに関する正しい知識を身につけておくことが非常に重要だと思います。