猫の嘔吐の原因は?食後や空腹の嘔吐対策と危険な嘔吐の見極め方を獣医師が解説!

嘔吐予防

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ども!にゃんとす@nyantostosです!

夜間救急で多い質問がこちら。

猫が嘔吐したのですが、大丈夫でしょうか…??

人間が吐く時は、病気や体調が悪いことが多いので、猫ちゃんが嘔吐するとびっくりしてしまう方も多いようです。

今回は猫ちゃんが嘔吐した時、危険な嘔吐かどうか、そしてその原因を見極めるポイントを詳しく伝授しようと思います!

獣医にゃんとす

獣医にゃんとす

獣医師・獣医学博士

– 臨床獣医師を経験後、がんをはじめとした難病に苦しむ動物を救うべく研究者を志す。

1匹の猫と暮らす「げぼく」

著書:猫をもっと幸せにする『げぼくの教科書』

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獣医師・獣医学博士

– 臨床獣医師を経験後、がんをはじめとした難病に苦しむ動物を救うために研究者を志す。

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目次

嘔吐の原因を見極める①:猫は嘔吐しやすい動物

私たち人間が吐いてしまう場合、体調不良や何らかの胃腸の病気である可能性が高いですよね?

しかし、猫ちゃんは嘔吐したからといって、必ずしも異常があるとは限りません。

なぜなら、猫ちゃんは人に比べて嘔吐しやすい動物だからです。

猫が吐きやすい理由

  • 丸呑みした獲物の毛を吐くため
  • 胃に溜まった毛玉を吐くため

丸呑みした獲物の毛を吐くため

獲物を丸呑みするのが本来の猫の食事スタイル!

猫の本来の食事スタイルはネズミや小鳥などの小動物を丸呑みするものでした。

消化しきれなかった獲物の被毛は、うんちとして排出するか、口から吐き出すしかありません。

そのため、猫の身体は嘔吐しやすい構造(食道の筋肉構成の違いや咽頭反射が弱い)が原因ではないかと考えられています。

胃に溜まった毛玉を吐くため

長毛種は特に嘔吐しやすいよ

これは皆さん想像しやすいのではないでしょうか?

ご存知の通り、猫は一日の多くの時間をグルーミング・毛づくろいに費やします。

猫の舌はトゲトゲしていて、毛を絡みとる構造をしており、毛を飲み込んでしまうのです。

嘔吐の原因を見極める②:大丈夫な可能性が高い嘔吐

このように猫は吐きやすい動物なので、吐いたからといって必ずしも病気とは限りません。

以下の場合は様子を見て大丈夫な場合が多いです👇

  • 毛玉を吐いた時
  • 食後すぐに吐いた時
  • 吐いた後も元気があり食欲もある
にゃんとす

特に早食いや空腹で吐いてしまう猫ちゃんは結構います

近年の研究から月3回以上の嘔吐が少なくとも3ヶ月以上続く場合は、胃腸の病気の可能性があるという研究結果も出ています。もし、嘔吐が慢性的に続くようなら、一度精密検査を受けた方が良いでしょう。

嘔吐の原因を見極める③:危険な嘔吐の特徴

しかし、油断は大敵です。
もちろん、その嘔吐の原因として、病気が隠れている場合があります。

危険な嘔吐の特徴は以下の通りです。

危険な嘔吐

  • 1日に数回以上吐いたり、数日間に渡って吐く
  • 長期間に渡って吐く
  • 元気や食欲がない
  • 体重が減っている
  • 尿が出ていない
  • お腹が張っている
  • 下痢やけいれんなど他の症状を伴う
  • 血が混じる(暗赤色・茶色の嘔吐物)
  • 糞便の臭いがする

1つでも当てはまる場合、何らかの病気である可能性が高いです。

動物病院で精密検査を受けた方が良いでしょう。

嘔吐の原因を見極める④:危険な嘔吐の影にはこんな病気が潜んでいる!

では、このような危険な嘔吐がある場合、どのような病気が考えられるのでしょうか?

胃腸などの消化器の病気

やはり、一番最初に頭に思い浮かべる嘔吐の原因は、「胃腸の病気

炎症性腸疾患や膵炎、食道炎、胃炎、寄生虫などが当てはまります。

また、消化器型リンパ腫をはじめとした胃腸のがんが原因で、嘔吐を呈する場合もあります。

便秘でいきみすぎて、排便時に吐いてしまう猫ちゃんもいます。

便秘の改善方法については下記記事でまとめているので、お困りの方はぜひご一読ください。

胃腸の病気が原因で起こる嘔吐の特徴は以下の通りです。

胃腸の病気による嘔吐の特徴

  • 長期に渡って吐く
  • 食欲がない
  • 下痢などの他の消化器症状
  • 体重減少を伴う

海外の研究グループも「猫の嘔吐を甘く見るな」と警鐘を鳴らす

ここで、2015年のテキサス州のAlamo Feline Health Centerから報告された研究をご紹介しましょう。

この研究でわかったこと

  • 少なくとも3ヶ月以上・月に3回以上嘔吐がある猫の 96% がなんらかの胃腸の病気にかかっていた
  • しかもその半数は消化器型リンパ腫をはじめとした”胃腸のがん”であった

研究の詳細

2008年から2013年まで、慢性的な嘔吐・下痢・体重減少のいずれかを示して来院した300匹の猫について解析したという研究です。

にゃんとす

300症例という数をまとめた報告は獣医学研究ではあまりありません。

これらの研究で対象となった猫の特徴が以下の通りです。

研究の対象となった300匹の猫

以下のいずれかの症状を示す猫300匹を対象にしました。

  • 少なくとも3か月連続して月に3回以上嘔吐する
  • 3週間以上の小腸下痢
  • 過去6年以内に1ポンド(約453.6グラム)以上の体重減少

その内訳は以下の通りでした。

  • 嘔吐のみ:119匹(40%)
  • 嘔吐 + 体重減少:95匹(32%)
  • 嘔吐なし(下痢や体重減少のみ):86例 (28%)
にゃんとす

嘔吐だけに着目した研究ではありませんが、300匹のうちおよそ70%と大半の猫ちゃんで嘔吐が認められていたようです。

そしてこれらの猫ちゃんたちは以下の検査を受け、病気かどうか診断されました。

以下の検査によって診断された

  • 超音波検査(エコー)
  • 内視鏡検査(胃カメラ)
  • 生検(腸の一部を採取して顕微鏡で観察する)

解析の結果、上記の症状を示す猫のなんと96%(288匹)が何らかの胃腸の病気であったと結論づけています。

以下に結果をまとめます。

結果まとめ

慢性嘔吐・慢性下痢・体重減少のいずれかを呈する猫300匹のうち、288匹(96%)に異常あり

  • 150匹(50%):慢性腸炎
  • 124匹(41%):リンパ腫
  • 11匹(4%):非リンパ性腫瘍
  • 3匹 (1%):その他の疾患
  • 12匹(4%):正常

約半数がリンパ腫をはじめとした「胃腸のがん」であったのも驚きですが、特筆すべきはこの研究の対象となった4割の猫ちゃんは「月に3回以上嘔吐がある」という症状だけだったということです。

にゃんとす

つまり「月に3回以上嘔吐がある」という症状だけで、最悪の場合リンパ腫などの胃腸のがんの可能性もあるということ。

Norsworthy et al, Prevalence and underlying causes of histologic abnormalities in cats suspected to have chronic small bowel disease: 300 cases (2008–2013). JAVMA, 2015, 247(6), 629-635

まとめると、少なくとも3ヶ月以上・月に3回以上嘔吐がある場合は、胃腸の病気が隠れている可能性が高いと言うことができます。

そして研究グループは「猫は吐きやすい動物だからと軽く受け止めるのではなく、慢性的な嘔吐については真剣に受け止めるべきだ」と、警鐘を鳴らしています。

胃腸以外の病気による嘔吐

嘔吐の原因となる病気は、胃腸の病気だけではありません。

誤食による中毒や腸閉塞

これも夜間救急をしていると多く診ます。

猫に多い中毒は、ユリ科をはじめとした各種観葉植物、ネギ、チョコレートなどです。

中毒による嘔吐の特徴

  • 短時間のうちに複数回吐き続ける
  • 下痢・痙攣・意識低下などの他の症状を伴う

また、猫ちゃんの異物誤食は圧倒的に「ひも」の誤食が多いです。ビニールやおもちゃなどを食べてしまうことも。

胃の中に残っている場合は無症状なことも多いですが、腸が詰まってしまったり、ひもに手繰り寄せられて腸が裂けてしまった場合は命に関わります。

異物誤食による嘔吐の特徴

  • 短時間に複数回吐き続ける
  • 元気消失・ぐったり
  • 便の臭いがするものを吐くことも

これらは命に関わりますので、すぐ動物病院を受診し、催吐処置や内視鏡、摘出手術を受けてください。

泌尿器の病気(尿毒症)

猫は尿のトラブルも多いです。

仕事から帰るとおしっこをしてなくて、何度も吐いています。

これ。夜間救急ではとても多い。

体の毒素は尿と一緒に排出されます。

結石などで尿管や尿道が詰まったり、腎臓病で尿を作ることができなくなってしまった場合、尿と一緒に毒素を体外へ出すことができなくなってしまいます。

その結果、この毒素が全身に回り、様々な症状が出るようになります。

これを尿毒症と言います。

これも命に関わりますので、すぐに動物病院を受診してください。

その他

甲状腺機能亢進症や糖尿病性ケトアシドーシスなどの内分泌疾患、肝疾患など他にも様々な病気が嘔吐の原因になり得ます。

上記の危険な嘔吐に一つでも当てはまる場合は動物病院で精密検査を受けた方が良いでしょう。

嘔吐の原因を見極める⑤:嘔吐物から原因を予測する

嘔吐物の内容からも原因を予測し、大丈夫な嘔吐か危険な嘔吐かをある程度見極めることができます。

毛玉を吐く

毛玉が嘔吐の原因の場合、問題ない場合が多いです。

頻度が多い場合は次のことを試してみましょう。

毛玉をよく吐く時は…

  • こまめにブラッシングをする
  • 食事をヘアボールケアに替える
  • サプリメントを与える
  • 猫草を与える

こまめにブラッシングをする

グルーミングで飲み込む毛を少なくするために、こまめにブラッシングをしてあげましょう!
特に暖かくなり始める3月前後、寒くなり始める11月前後は抜け毛の量が非常に多くなるので、注意が必要です(換毛期)。

食事をヘアボールケアに替える

オススメはロイヤルカナンやヒルズの大手メーカーのフードです。

長年の膨大な量のデータから作られており、多くの獣医師がオススメするフードで、これを選んでおけばまず間違いありません。

フードに関する情報はネット上では間違った情報だらけです。

サプリメントを与える

ラキサトーンという白色ワセリン・流動パラフィンを含むサプリメント。

動物病院でも処方されるサプリです。

飲み込んでしまった毛玉を、便と一緒に排出させる効果があります。

動物病院に一度相談して見るのが良いでしょう。

猫草を与える

胃を刺激することで、嘔吐を誘発すると言われています。

上記で解決するなら特に必要ないでしょう。

未消化の食べ物を吐く

未消化のフードを吐いてしまう場合は早食いが原因のことが多いです。

フードを噛まずに丸呑み、しばらくして丸ごと吐いてしまう…といった感じ。

1回の食事を時間をかけて与える

どうしても早食いで吐いてしまう時は、食事を1度にたくさんあげるのではなく、複数回に分けてこまめにあげてみましょう。

早食いで吐いてしまう時は、1回の食事を複数回に分けるか、時間をかけて与える

  • 自動給餌器で食事回数を増やす
  • 食器を高くする
  • 早食い防止用のフード皿を使用する

うちのにゃんさんも早食いで食後の嘔吐が非常に多かったのですが…

自動給餌器脚付のフードボウルで嘔吐が激減しました。

白色や黄色の液体(泡)を吐く

白色や黄色の液体もしくは泡を吐く場合、空腹が原因の可能性が高いです。

対策としては空腹時間をできるだけ、短くすることが大切です。

自動給餌器で空腹の時間を短くする

お腹が減りすぎて吐いてしまう猫ちゃんは、なるべく空腹の時間が長くならないように、複数回に分けてごはんをあげるのが良いでしょう。

対策の1つとして自動給餌器を使った食事回数のコントロールもオススメです。

おすすめの自動給餌器

うちのにゃんさんも空腹で吐きがちなので自動給餌器での給餌を普段の食事の一部として取り入れています。

他にも自動給餌器を使って食事回数を増やすメリットはたくさんあります。

ピンク、血混じりの液体を吐く

胃腸や口から少量の出血がある場合です。

何らかの消化器の病気の可能性がありますので、動物病院を受診しましょう。

また嘔吐を複数回繰り返すことによって出血することもあります。

暗赤色、茶色の液体を吐く

胃腸から大量の出血がある場合、チョコレートのような暗赤色の嘔吐物になることがあります。

また異物などで腸が詰まっている場合、便の臭いのする茶色の液体を吐いてしまうことがあります。

これも危険な場合が多いので、動物病院を受診するようにしてください

嘔吐の原因を見極める⑥:嘔吐と紛らわしい”吐出”

嘔吐と紛らわしい症状に”吐出”があります。

吐出は、主に口から食道にかけて病変がある場合に起こる症状です。

すなわち、胃に到達する前にそのまま吐き出してしまうという症状が「吐出」なんですね。

嘔吐と吐出の違い

嘔吐

  • 胃の内容物を吐き出す
  • ウプッ、ウプッのような前兆がある(レッチング)

吐出

  • 胃に到達する前に吐き出す
  • 前兆がなく、食後に突然吐き戻す

毛玉や異物で食道が詰まっていたり、生まれつきの奇形や食道炎をこじらせて食道が狭くなってしまっていたりするときに吐出が認められます。

嘔吐とは原因となる病気が異なるので注意が必要です。

にゃんとす

嘔吐と吐出は同じ「吐く」という症状として混同されやすいのです。

食後にすぐ吐くか?吐き戻す前に前兆はあるか?をよく観察しておく必要がありますね。

嘔吐の原因の見極め方のまとめ

猫は嘔吐しやすい動物ではありますが、その影に病気が潜んでいる場合もあります。

危険な嘔吐に1つでも当てはまる場合は、動物病院にすぐ連れて行きましょう。

  • 1日に数回以上吐いたり、数日間に渡って吐く
  • 長期間に渡って吐く
  • 元気や食欲がない
  • 体重が減っている
  • 尿が出ていない
  • お腹が張っている
  • 下痢やけいれんなど他の症状を伴う
  • 血が混じる(暗赤色・茶色の嘔吐物)
  • 糞便の臭いがする
嘔吐予防

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